堀厩舎といえば、外厩はノーザンファームしがらきを使用するのが定番。ところがタスティエーラは皐月賞2着後、美浦から数時間で移動できるノーザンファーム天栄へと放牧に出された。
体力的にも精神的にも輸送に絡む負担は決して小さくはない。皐月賞からダービーへのタイトな間隔(中5週)であれば、近隣の放牧先を選択するのは当たり前? いや、ごくまれなケースを除いて天栄を使用してこなかった堀厩舎のこれまでを踏まえれば、今回の「非常戦術」はプライドを投げ捨てた決死の采配と言えようか。
むろん、新たな試みは一面的にはプラスに出ても、他の面ではマイナスに働くことはままある。そう、慣れない場所での調整はまさに諸刃の剣。ましてや心身ともに完成途上の若駒ならなおさらだろう。果たしてうまくいったのか、いかなかったのか。それが逆転Vへのポイントとなる。
「3日にノーザンファーム天栄から帰厩。牡馬にしてはカイ食いは良くないほうですが、皐月賞前よりはいいし、ウイークポイントの左トモも良好な状態です。ただ、短期放牧による環境の変化で気持ちが高ぶっていたので、その点は丁寧に時間をかけて心身を整えてきました」
帰厩時から3週間近くたった今は、堀調教師が心配していたテンションの高ぶりはみじんも見られず、予定通りの調教メニューが施されている。
何より特筆できる点は以前よりもはるかに胴に伸びが出てきており、明らかに長距離仕様の体つきに変貌を遂げている点である。かつてアパパネが桜花賞からオークスへ挑んだ際にも見られた馬体の変化。来るべき戦いの舞台を予見できるのはまさに一流馬の証しであり、タスティエーラがクラシックホースとなるのは宿命なのかもしれない。
「1週前追い切りは残り1ハロンで抜け出すよう指示を出しました。これまでは集中力が途切れることが多かったのですが、今回は頭を上げたり、ハミを抜いて減速することもなく、鞍上のほうに気持ちが向いていました」と堀調教師がかつてないほどの切れ味を披露したその動きに納得の表情を浮かべる一方で、2週連続で手綱を取ったレーンは「仕上がり度合いは順調にレベルアップしていますね」と満足そうに口にした。
同じくテン乗りだったヴィクトリアマイル(ソダシ2着)、オークス(コナコースト7着)で戴冠とはならなかったが、その馬たちとは違い、2週続けてしっかりとコンタクトを取ってきた点は見逃せない。もともとムーア騎乗で圧勝したデビュー戦からして、あたりの強い外国人騎手は相性がいいタイプだ。
馬の調整や人の確保など、新たな試みは今のところすべて吉と出ているとなれば…。2015年3着と父サトノクラウンが成し遂げられなかったダービー制覇は、もはや必然なのかもしれない。
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Source: ターフ速報-競馬まとめ-